クレー射撃メンタルと射撃率
JOCでも色々な角度からメンタルトレーニングにアプローチしています。メンタルが強いと言うことはチャンスとピンチに強いと言うことです。すなわちメンタルが強ければ自分のパフォーマンスを出しきれる確立があがると言うわけです。そのためのトレーニングプランであり目標設定なのです。
初めにメンタルトレーニングの研究を始めたのはドイツでした。勝つためのプロセスの1つに欠かせない心の動揺をコントロールできないものかと色々研究したわけです。おそらく一番データーを持っているのはドイツですね。それにあせってアメリカ、ロシアと追いかけていったのです。日本はメンタルトレーニングにかんしてはかなり後れを取っているようです。盛んに研究がされていますがまだもう一歩と言う感じです。
以前日本クレー協会でもメンタルに取り組んだことがあります。医科学委員会と言うものを設置して競技力向上のサポートに着手しました。しかしながら残念なことに約2年でこの計画は廃止されてしまいました。なぜならば当時の役員さんの中にはこんなことは無駄だと思っている人も多くいたようで予算もかかるので中止となったのです。特にフィジカルのサポートがある中での海外遠征はとても安心でありパフォーマンスに多大な影響を与えるはずです。今となってはとても残念です。当時の代表選手の個々の身体能力やメンタリティーの分析をしている段階での廃止でしたので何一つ成果の無いまま終わってしまいました。どんなことをしたかと言いますと心拍数計をつけて競技中の脈拍の上昇を図ったり成績と心拍数の関係を調べたりしました。このデーターサンプリングにはオーストラリアのマーク・ラッセルやアダム・ベラも協力してくれてトップアスリートとの比較なども行いました。
25点満射時の心拍の変化をグラフにして比較検討され自己のコントロールの目安にするというものです。当然ラッセルは25点満射位当たり前ですので心拍に変化無しでした。彼は平常心拍が50前後と低いのですが競技中は約30ほど心拍が上がり80のラインをキープしていました。このデーターは97年の花巻の本部公式の時に採取したもので当然彼が優勝でした。
通常競技時には必ず心拍数が上がります。基本値+30〜40が一般的には理想とされているようで心拍数が150を越えると極端にパフォーマンスが下がることが判っています。また、トラップの場合コールの瞬間に+30となり発射後は平常に戻るのが良いという結果が出ました。ずーと上がりっぱなしだとスタミナが持たないからです。ラッセルはこの+30の上げ下げが見事にはまっていて模範的なグラフとなって結果に残りました。
当時の代表選手の競技中の満射データーも取りましたが10枚くらいまでは基本値+30〜40を保っていましたが20枚以降は徐々に心拍数が上がり最終的には+80となり破綻するぎりぎりでした。 代表選手でも競技中の満射にはプレッシャーがかかりドキドキするものなのです。しかしラッセルはどうでしょう?動揺などありません。満射で当たり前だからです。25点など撃って当然と思っているからこそプレッシャーなど無いのです。また招待試合ですがノンタイトルですし観光気分とライバルはアダムのみと言う事から気楽なものだったのでしょう。それを踏まえて考えても彼らは200点ストレート満射位は軽くこなすからこそ25点満射になどプレッシャーなど無いのです。300枚クレーを撃つと2枚位外すかな?程度の感覚ですのでドキドキなんてしません。この外す2枚が国際大会で5ラウンド撃つ予選に入ってくると123点となるわけです。このレベルのステージまで上がらないと世界で対等には戦えないのです。ですから今の日本人がオリンピックの出場資格を自力で獲得するなど到底無理と言えます。
話を戻しましてこの心拍数の測定は不調時にも行われました。不調時は常に心拍数が平常時とほとんど変わらない状態でした。これが一般に言うテンションが低い状態であり結果が出せないで失敗する時の典型です。国際大会でイタリアや中国の選手はこの状態を強制回避するためにラウンド前に走ったりして強制的に心拍数を上げている光景よく見ます。心拍数とパフォーマンスがリンクしている以上この方法も有効といえますが普段からこの方法に取り組んでいないとダメでしょう。 
このテンションの上がらない状態をいかに回避するか?が成功への近道と言えます。確かにその通りです。
しかしながら私の考えは違います。テンションの上がらない状態をいかに回避するのではなくテンションが低くても満射する!これが知りたかったのですがその段階に行く前に医科学委員会は終了してしまいました。もしかしたらそんな方法は無い!ってことで回避することのみを叩き込む予定だったのでしょうか?今となってはわかりません。ただ各選手のデーターを取り低いから当たらない。高いから最後で破綻した。そんなデーターなんて何回とっても意味無いと思ってました。試合当日にテンションが低かったらもうその段階で終わり?そんな馬鹿げた話は無いはずです。失敗を成功に底上げする何かが絶対にあるはず!それこそが勝負だと私は思っています。私のコーチはその方法を知っているようです。マラソンの小出監督もおそらく知っているでしょう。おそらくこれはコーチと選手が一点の曇りも無い信頼関係がないと成立しないことと思います。自分のステージが低くてもコーチしだいではステージの底上げが可能なのです。しかしそういうコーチのいない人はやはり自分で何とかする以外ないのです。                     

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