みんなの素朴な疑問  どの弾を使えばよいの?
 

 日本国内では準国産装弾や輸入装弾が多種類販売されています。種類が非常に多いために銃砲店や射撃場でもすべての種類を常時在庫として取り扱うことは困難です。多くの場合一般的に需要の多いものを常時在庫とし、その販売比率によって種類を絞り在庫販売している場合がほとんどです。

よく初心者の方に弾はどれを使えばよいのでしょうか?と聞かれることがあります。そこで装弾を選ぶ基準をザックリとご説明します。
まず、弾の性能についてお話しします。
弾の性能は「弾速」 「パターン」 「ショック」の3つの要素から成り立っております。

【弾速】
字の通り、弾のスピードのことです。現状オリンピックルール用に製造されている射撃装弾の場合、約400m/sが標準とされています。これを基準に速いか遅いかという話になります。
何トライするのかはメーカーにより違うのでしょうが基本的には標準偏差値で表される場合が多いです。
メーカーによっては最大値を表示する場合もあるようですが日本規格、ヨーロッパ規格、アメリカ規格で若干の計測方法に差があり全ての弾を同列に速度を比較することはできないようです。


【パターン】
パターンは既定の距離で約80cmの円の中に何粒散弾が入るか?により決まります。 
円の中に入った実数÷装弾の総数により%(パーセンテージ)で表示されます。
これはあくまでもメーカーによる発表値であり検査する条件や使用する銃によって差が出ることは確かです。なので基本的に弾速同様目安という程度となります。
一般的には60%以上パターンが出れば販売ベースとなるようで80%以上パターンが出る弾はかなり優良と言えます。

【ショック】
肩に来る衝撃に関しては単純に強いか?弱いか?なのですが一概にそれだけではありません。
初心者のうちはわからないことが多いですが、ある程度キャリアを積むとショックの質についてわかってくるようになります。

強さに関しては薬量と火薬の種類(燃焼速度)の問題やワッズのクッション性能、雷管との相性でかなり違ってきます。
一般的に弾速を上げるには薬量を増やし火薬の燃焼ガスの圧力を上げるのが一番手っ取り早いですが当然ショックが強くなります。
ここを上手に火薬、ワッズ、雷管を組み合わせてショックを少なく弾速を上げる研究をメーカーは行っています。

ショックの質とは実際の体感によるイメージであり物理的な衝撃度とはまた違うものです。
よく言われるのが下記になります。

・抜けが良い
・切れが良い
・硬い
・押されている時間が長い
・ズシンと来る
・パチンと来る
・柔らかい


撃った気がしないので強い弾が好き!という人もいればショックが楽だから柔らかいに越したことがない!など意見が分かれます。


これらを総合すると装弾の選ぶ基準で一番多いのは体感ショックによるフィーリングとなる場合がほとんどです。
また、たまたま成績が良かった。満射が出た。などゲン担ぎの要素も非常に選択される基準となります。

ショックに関しては使用する銃との(銃身との)相性もありミロクではショックがないけどPerazziでは強く感じる等も実際にあります。
初心者のうちはフィーリングで選んで問題ないと思いますがなるべくショックの少ない弾を使った方が良いかもしれませんね。



さて、ここで本題に入りますが主にトラップ競技でのお話です。

まず、弾速とパターンについてですが、こちらは基本的に反比例で両立が非常に難しいとされています。
弾速を上げるとパターンは低下し、パターンを出そうとすると弾速を抑えなければなりません。
一般的に高級装弾は火薬の質や雷管、ワッズ等をうまく組み合わせ弾速とパターンを両立させるべく研究開発されています。

そこである程度パターンを確保しつつ弾速を上げていくと弾速400m/sくらいで落ち着いてくるようです。
殆どの弾が弾速400m/s、パターン70%くらいの性能となり上位グレードはパターンが向上してくるような感じでラインナップされています。

輸入装弾の場合メーカーのHPに弾速と圧力を公表していますのでご自分の使用している弾を調べてみるとよいですね。

弾速の測定に関して日本の規格はヨーロッパと比べて弾速が出にくいです。おそらくですがヨーロッパの方が弾速計で測定するときの銃口の位置が日本よりも若干近いのかもしれません。

実体験としてダイセルパイロテクニクス製造のレッドバードのリニューアルテストイベントの時に色々な弾を比較計測しました。
この時レッドバードはプラチナハイスピードで418~428m/sを記録していました。
私が持ち込んだB&P装弾はメーカーHP上では415m/sとなっておりますがコンペもレジェンドも、F2-4もフラッシュも概ね404~408m/sくらいでした。RC4も同じ結果が出ていますのでイタリア規格に測り方だと日本規格-10m/sということになります。

この時にスピードが速かったのはレッドバードダイアモンドと成田射撃場で販売しているメリオールです。どちらも弾速430m/sとなっており表記に偽りなく数値が出ておりました。同じ430m/sとなっているGBプリウスに関してはこの時テストしておりません。

また当時販売されていたSKBのアポロSPに関しては410m/sも出ておりませんでした。全ての種類の装弾が公表値の-20~-30m/sで恐らく銃口が計測機器に近くさらにMAX値を公表していたのだと思います。
これは測り方の問題なので虚偽ではないのだと考えますが実際に400m/sと言われていた弾を撃ってみると体感に差があり二の矢で一瞬ラグを感じる気がしました。

普段使用している弾と弾速差で40m/sも差があればそりゃ体感差もあるかなと思います。
しかし弾の品質に問題があるわけではなくずっと同じ弾を使用していれば頭の中の引き金を引く回路はその弾を使用した状態で構築されますので影響はありません。


パターンに関しては80%を超える装弾はそんなに多くありません。
私が自分のDT10で確認している装弾は下記となります。(販売されている全商品を確認したわけではありません)


B&P フラッシュ 90%を超えることもある
FIOCCHI オフィシャル コンスタントに80%後半
Winchester AA 80%以上
レッドバード プラチナハイスピード 80%以上
レッドバード ダイアモンド  80%以上
RC4 80%以上
RC4 レッドショット コンスタントに80%後半


国際大会の場合ノ―ターゲット(出割れ)を少なくするために硬めのクレーを使用しています。この為アンチモンが多く混合されている弾だと弾が硬すぎて貫通してクレーが割れないことがあります。今は予選からパウダークレーを使用しますので貫通すれば粉が出ますので当たり判定とされるのでほとんど関係ないようです。

しかし、当時はクレーのメーカーとその硬さによっては低アンチモンや純鉛弾を使用しないと割れにくい場合がありました。メーカーと契約している選手は大会ごとに7号や純鉛弾を特別に作らせて使い分けておりました。

市販品でこれに近いものは当時FIOCCHIオフィシャルやB&Pフラッシュ(鉛にメッキコーティングで生卵のような作り)くらいでした。
私はこれらの情報を友達のイタリア選手からもらい海外派遣ではFIOCCHIをチョイスして使っておりました。
実際にどのくらいクレーが硬いかというと1m位からコンクリートの上に落としても割れません。
私はそれ以降、海外派遣ではまずクレーを拾いに行き落としたり手で割ってみて硬さを確認するようにしました。

国内でのクレー射撃の場合、国際大会で使われるような硬いクレーは使われていないので特にそれらを気にする必要はありません。

2003LONATO W.Cのクレー
7粒当たって割れずに落ちていた 



因みに私の装弾を選ぶ基準は弾速重視です。76mのクレーを撃つ場合1秒で15m以上到達点に差が出る(実際には違う)と考えると400m/sよりも415m/sさらに420m/sとなっていきます。ただ弾速が上がればその分だけショックが強くなりますので反動制御の技術やリコイルパッドの性能も加味しなくてはなりません。

65mのクレーを撃つには400m/sあれば十分でしょう。私は76mを撃つならB&PフラッシュかRC4かレッドバードプラチナハイスピード若しくはダイヤモンドをチョイスします。
しかしここ2年の地方公式ルールの65mや72mで言うと、練習で一番満射が出ているのはRIOウィナーです。しかしながら実際の試合では気持ち的に価格が高い弾を使用したくなるのです。

2019年度の地方公式大会(ニッコー栃木)で99点を出したときはオフィシャルで関東ブロック大会(成田)で95点を出したときはレッドバードです。
あとは私は意外とパッケージ派なのでフラッシュのようなキラキラした豪華に見える紙箱につられる傾向があります。


最終的には弾速で選ぶか、パターンで選ぶか、ショックで選ぶかとなり、そこへ成績が出たゲン担ぎの要素を踏まえ選ぶとよいでしょう。弾も競技の道具の一つなので精神的に信頼できるという点が非常に大事です。

初心者の場合は、まずは数を撃つことが大事ですので価格は押さえて衝撃の柔らかいものを選ぶとよいです。
お勧めはB&PレジェンドかRIOウィナーです。

ショックの強い弾は衝撃を抑え込もうとして無意識に体に力が入ってしますので射撃に慣れてくるまで手を出さない方が無難かもしれません。
250発単位で種類を変えて試してみるのがおすすめです。