Beretta DT10 ダブルトラップ仕様改造計画
始まりは2年位前でした。しばらく海外遠征に行っていなかった時に本部公式で井上選手や、中山選手に「ダブルの選手の使っている銃のトップリブがすごいことになっている!めっちゃハイリブになってるよ!」と言われました。当時は何のことかさっぱり分かりませんでした。
2006年の9月にシンガポールに行った時に「めっちゃハイリブ」を目の当たりにして驚くよりも思わず笑ってしまった。しかしダブル専門の選手は例外なくハイリブ加工を施しているかMX2005(PerazziのDT専用銃)を使用していていました。
例えば中国の選手だけとかアラブの選手だけが使っているならまだしも私以外のほとんどの選手が最低3cm以上のハイリブを使用していて、しかも構える位置はほぼ水平より上で完全待ち撃ちでした。
私が海外の試合に参加していないうちに、その撃ち方と道具が進化していたのでした!
私はミロクのハイリブを使用していますが少なくとも3倍の高さのある銃を皆使用していてファイナルに残った私の銃が逆に目立ってしまい試合終了後かなりの選手が新開発のダブル用の銃かと見に来た位だった。
日本に帰り国体に参加して一段落付いた時に、ふとハイリブのことを思い出し製作を開始した。
まずどのくらいの高さが最も有利なのか?一番のポイントはそこだと考えました。
ハイリブ化に関しては2年も出遅れていますが逆に今、選手が使用している仕様がベストなのだろうと考えました。おそらく試行錯誤の末に今の高さになったに違いないからです。
そう思い完成品のデータを頂きそっくりそのままパクルのが一番早いと考えました。
しかしながらそこまで考えていなかったためにアジアクレーでは参考になるデーターのサンプリングをしておらず撮影した写真と自分の記憶を頼りに取りあえず試作品を作成しました。



試作品第一号がこれです。
高さが5cmで長さが10cmの物を作りました。
これは右の写真の記憶から何となく決めた数値でしたがまぁそれは試作品ですので取り合えず取り付けて撃ってみない事にはこれが良いのか?悪いのか?が分かりません。
結果的にはこれでは高すぎる事は判明、しかも長さが短いためか今まで気にすることが無かった照星が2つ見えると言う現象がおきてしまい、まったく射撃になりませんでした。
 
この試作品で分かった事

@高さはもっと低くないとダメ
A長さはある程度ないと左目が利く
B極端なハイリブでもベンドさえあっていれば弾は初矢も2の矢も照星の所に行く

私が一番、不安だったのがBです。果たして2に矢は狙ったところに弾が飛んでいくのか?
初矢と2に矢で誤差は出ないのか?
しかし実際に撃ってみるとベンドの位置を通常のセッティングより浅めに合わせることで弾は照星のところに飛んで行きました。




一番驚いたのは左の写真のDT10です。そんなに高くて果たして当たるのか?いったい2の矢は何処を狙っているのか?
構えさせてもらったのですが構えると肩付けが極端に低くなること意外はさほど気にならなかったのが不思議でした。
成績は私よりも下でしたが一番目を引きました。


結局、試作2号を製作する上で一番参考にしたのは上の写真の2丁です。
2007年の4月に韓国のワールドカップに参加した際にデータを取ってきました。
形状的には右の写真に近い感じをイメージして後は長さを決める上で左の写真のアメリカの選手に注目しました。
彼は初矢こそ決め撃ちですが2の矢は良く狙っていました。この銃を構えさせてもらったところ照星が2つ見えてしまうと言うことは無くやはり長さによって解消されることが判明しました。
但し長くなればなるほど重量が増えると言うデメリットもあるので色々試しながら25cmあれば十分と言うことが分かり早速2号に反映しました。



取りあえず出来上がったのがこれです。
サイズは高さ35mm長さ250mmです。
まだ高さの変更を考えて板状のままですが試し撃ちには十分です。
保険をかけて照星はマスターアイサイトを使用しました。
この段階で重量は300gありこのままではとても実践投入は無理ですが実際には中をくりぬくので150g以下になることは分かったいました。
2日間で750発ほど撃ち2の矢の精度を上げるために4mmほど高さを下げることにしました。
塗装をしていなかったので照星が写り込んでます。
実際に撃ってみて気がついたのは照星は大きめで目立つほうが良いと言うことです。
あまりにも視界が良すぎて照星から目が離れてしまうことが多くこのあたりも色々試す必要がありそうです。
当然ベンドも可変にしてリブの分だけ高く上げないとダメです。
しかし弊害として肩付けが極端に低くなるのでパット自体を上にずらすか検討中です。



強化合宿で色々試した結果、高さを下げて31mmにして余分なところを一番簡単な方法で肉抜きしたのがこちらです。
まだ削れる部分があるので20gくらいは軽く出来そうです。
現在重量は120gです。
何分,銃身の先端部分にかかる重量ですので軽いにこした事はありません。
銃身自体が1480gですので丁度1600gと言うことになります。
出来れば1560gくらいに仕上げたいと考えていますが強度も考えないといけませんので思案中です。
もしオリンピックに出れるようならばチタンで削りだすか?とこれを製作してくれている職人さんが笑いながら言ってました。
チタンならばさらに半分の重量になるそうです。
これから実際に強化練習で練習して12月に行われるアジア大陸選手権(クウェート)で実践投入となるのですが国内ではダブルトラップは行われていないので6人で撃つ機会がまったくありません。
この事から大会前に1度、海外で試合を経験しておきたいのですがどうやら男子の派遣はないようなのでぶっつけ本番になりそうです。